給料ファクタリング・後払い(ツケ払い)現金化・先払い買取り は「貸金」です

1 給ファクタリングとは

ファクタリングは、給与所得者等から、賃金債権(の一部)の譲渡を受けたという形式で、資金融通サービスを行うものです。

利用者は、例えば、賃金債権の一部である10万円分を給ファクタリング業者に譲渡したことにして、手数料2万円を差し引かれ、8万円を受け取ります。その上で、給与支給日の後に設定された支払期日に、当該業者に対し、譲渡済み債権を代理受領したので引き渡すという名目で、10万円を支払います。

ファクタリング業者は、これは「債権の売買」であって「金銭の貸付」ではないから、利息制限法・出資法・貸金業法は適用されないと主張していましたが、実質的には、8万円を借りて、10万円を支払うのと同じであり(支払期日が1か月後であれば、年利換算で年300%)、貸金業法違反(無登録営業)、出資法違反(高金利)のヤミ金です。


2 給与ファクタリングの法的問題点

金融庁は、2020年3月5日、ファクタリングは、貸金業法2条1項の「手形の割引、売渡担保そ他これらに類する方法」すなわち「金銭の貸付」に該当すると考えられることを明らかにし、東京地方裁判所も同月24日に同様の見解に立つ判決を言い渡しました。

したがってファクタリングの手数料が、年利換算で年109.5%を超えるとき(大部分はこれに該当すると考えられます。)は、貸金業法42条により、契約全体が無効となるので、利用者は、ファクタリング業者に対し、何らの契約上の支払義務もありません。

また、この場合、無効な契約に基づき受領した金額が不当利得となるかどうかが問題となりますが、基本的には、不法原因給付(民法708条)として、その返還義務も否定されるべきものと考えられます。

なお、従来から横行している事業者ファクタリング(中小企業の売掛債権を買い取るという形式で資金融通サービスを行う者)についても、金融庁は、「ファクタリング契約や売掛債権売買契約において、譲受人に償還請求権や買戻請求権が付いている場合、売掛先への通知や承諾の必要がない場合や、債権の売り主が譲受人から売掛債権を回収する業務の委託を受け譲受人に支払う仕組みとなっている場合は、ファクタリングを装ったヤミ金融の可能性が高い」としています。

  したがって、これらの事業者ファクタリングについても、給ファクタリングと同様に解すべき事例は少なくないと考えられます。

   私たちファクタリング被害対策弁護団は、まずは給料ファクタリング被害に取り組みますが、悪質な事業者ファクタリング被害にも取り組んでいきま す。

3 後払い(ツケ払い)現金化・先払い買取りとは

 金融庁が給料ファクタリングについて明確な見解を示したこともあり、現在は、給料ファクタリングは下火になっていますが、これに代わって、実質的には資金融通の機能を持つサービスがでてきています。

 例えば、後払い(ツケ払い)現金化は、商品券など換価性の高い商品を後払いで購入した形を取り、購入者は購入した商品券を換金して資金を得て、定められた支払期日に商品券の価値以上の金員を売買代金として支払うというもの、先払い買取りとは、保有しているスマートフォンなどを業者に売却した形をとり、すぐに売却代金を得た後、売却した商品を引き渡さなかったことによるキャンセル料という形で、定められた期日に売却代金に違約金を加算して支払うというものです。

 これらは、いずれも金融を得る目的で取引がなされているのであれば、経済的にも金銭の貸付けと同様の構造を持つものですから、やはり、出資法や貸金業法の適用上は、金銭の貸付けにあたると考えられます。

 したがって、出資法の規定により計算した「年利」が109.5%を超えるようであれば、やはり、貸金業法42条1項により、契約全体が無効となります。(例えば、4万円を受け取って6万円を翌月(30日後)に支払うというようなケースでは、「年利」は30日で50%の利息なので年利換算で600%を超えることになります。)

 

私たち東京ファクタリング被害対策弁護団は、給料ファクタリング被害以外にも、出資法や貸金業法の潜脱となるような悪質商法被害にも取り組んでいます。